来春の親魚、その10

2021/11/11

来春の親魚

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 来春の親魚シリーズに戻りまして、今回からは「穂竜」の話になります。

穂竜の形の話は置きまして、金魚の色柄、特に穂竜系の色柄の固定をメインの交配を目標にした交配を記しています。

色柄を目標にした交配については既に黒青竜の作出で経験しておりますが、その時点で赤色を消すので消した赤色を再出現(綺麗な赤色を持つ五花竜の作成の事)させるのに今は苦労しております。

色柄を消すのは、先祖返りを利用すると早いのです。「江戸錦」から、黒色色素(メラニン)を消した魚を「桜錦」として、新品種だと弥富の伊藤氏によって承認されたようですが、作出者がメラニン(浅葱色も含む)を消すことに10年の歳月を掛けたそうです。

思うのですが、自分も黒青竜の作出で赤色を消すのにずいぶんの年月をかけた様に思います。

桜錦から黒色色素を再現させるには消したメラニンは中々戻ってこないのですが、その様な交配は無駄で、もしメラニンを必要な柄に戻したいのなら、戻した仔は江戸錦なので桜錦と江戸錦を交配すれば良いのです。

穂竜形の金魚に消した色を戻すには別の金魚を交配すると(例えばキャリコ出目)パール鱗、肉瘤やふんたんが消えて色がよみがえっても、形が(穂竜系の魚には)戻らないのです。なので、大きな年月が必要となります。

さて、今日は穂竜の色柄を考慮しながらの親魚の話なのですが、先ず、穂竜の色は1色で無く2色で成り立つ色柄の金魚なのですが、基本色の色は「青文魚」の色であります(初期の穂竜は青文魚色1色の金魚でした)。

その青文色の金魚は昭和30年代に中国から輸入された金魚で、黒味がかった青灰色で飼育条件によって黒色(メラニン)が増減して銀色に変化します。黒色が増えると黒い金魚に見えたりします。

黄色に発色の斑紋を見出した時に、その黄色を稲穂の色に仕上げるべく、その基本色の青文色を秋の青空の色に仕上げれば「穂竜」のイメージの色柄の金魚に仕上がればと色柄の改良を目指した交配を続けて居るのですが、思うようには中々進みません。
有る色を消すのに10年の歳月を必要としたのに、新たな色を発色させ、それを固定(定着)させるには途方もない年月が必要なのかも知れません。前に進めるしかないと思っています。

で、又、来季の交配に予定の仔をお見せして置きます。



 写真は3枚共にメインの色を持つ仔をお見せしています。メインの色とは基本色の青灰色「藍鼠色(あいねずいろ)」と呼ぶ色ですが藍(アイ)は秋の青空の様な深い青に染め上げればと可能な限り青色の発色の仔を親魚にと残しています。勿論、簡単に青色の仔は産まれません。写真は3枚共に2尾の仔を写していますが、一尾は濃い「藍鼠色」の仔ですもう一尾は薄い「藍鼠色」の仔です。



写真(下)の濃い「藍鼠色」の仔は雌魚の様なのでこの仔を雌親にと思っていますがこの仔の尾が、すぼ尾なので雄魚は尾の親骨の張っている仔を相手にと思うのですが・・・。この仔の良い所は黄色の斑紋がバランス良い配置になって居るのです。



写真上から濃い「藍鼠色」ですが、黄色斑紋の大きさが下に行くほど大きくなっています。




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