転覆病の話

2022/01/09

転覆病

t f B! P L

 前回(身近な自然の摂理、17)で、我が家には冬眠中に発生した転覆病の仔が3尾います。
その3尾の内、一尾が浮いて居る転覆、後の2尾の仔は水底に沈む転覆です。転覆の形が浮くのと沈むのが
見られるのです。

浮く転覆は水面から氷山の一角の様にお腹の一部が空気に晒され、時には凍ります。血液循環が悪くなって壊死が起こりその部分が赤く充血し、時にはカビが生えている様に見えます。

一方の沈む転覆の仔も水底に接する部分の皮膚(鱗)もまた、金魚自体の重さで血流が滞り充血が見られます。この部分がやがて褥瘡となります。

褥瘡の部分にイソジンなどで消毒しても根本的な変化が無いので、この褥瘡は3月の暖かくなる時期まで
続く事になります。転覆病の症状が現れると、水温を上げたり、塩を飼育水に投入したり、唐辛子を入れてショックを与えたりしても、根本的な治療ではないため何時かは再発が見られます。

3月が来て水温が上がり、転覆がましになった仔を採卵に使用した経験が有るので、大事な仔は何とか飼育しますが採卵に使用しない仔は小川に(自然に)戻し自由を与える事にしています。
転覆を発症した仔は観賞的にはマイナスの仔なので観賞的価値はなく自然に返すのが摂理と考えます(自分勝手な思考)。

環境破壊と思われますが、この転覆病を発症した仔は99%の確率で産卵は不可能ですから、環境汚染は考えられないと思っています。

転覆病の話が書かれた記事をその昔見つけスクラップに張り付けていましたのでこの記事を説明して転覆病についての御理解をして頂くために此処に写真と共に私見を混ぜながら説明して置きます。



 写真(上)この記事は(写真の記事)昭和55年(1980年)8月31日、日曜の記事です。当時の新聞は字が小さく、読みずらいので内容を説明します。

1、「変形稚魚」と書かれていますが、転覆病との関りが無いように思いますが、変形魚に共通しているのは空気によって作用しているはずの「浮き袋」が機能していない点と記事は書かれています。
変形魚は浮袋が機能していないことをレントゲン撮影によっても確認していると書いているのです。

2、人口種苗の生産段階での変形魚出現率は、10~40%にも達していると記事は書かれています。ここで言う人口種苗とは、我々が今行っている金魚の交配と同じと思っています。なので、金魚の変形稚魚の出現率も同様なものと考えれば納得がいきます。

変形魚とは、浮袋が機能してない魚の事です。自分の今飼育している金魚は60尾浮袋不全(機能障害で転覆病)の仔が3尾居ますので出現率は、まあこんなものかも知れません。

3、記事は続きます!
浮袋が機能するかどうかが決まるのは、孵化してから10目迄の第一次開腔期と呼ばれる期間(体長10ミリ)と第二次開腔期(体長70ミリを超える)の2回が有るのだと書かれています。

4、この研究者は塩水の濃度を高くすと、浮袋の機能する稚魚は浮上、機能しない仔は沈下してしまう。ここでは浮袋が機能しない稚魚でも、活動がおお盛な仔は自力浮上するので麻酔をかけたと書いています。

この試験には、変形率の高い「マダイ」の稚魚、百六万匹を使用したと書かれています。
結果、浮袋の機能する稚魚だけが浮いた、浮いたものだけを掬いあげてイケスに入れれば良い。

最後には、マダイのみならず、イシダイや、クロダイにも応用可能だと結論を出されています。(金魚の稚魚にも応用可能かも知れません)

 写真(中)(下)はその記事の一部をアップして写したものです。




※自分としては一度に多数の卵を産む生物は、自然の摂理、(掟)として、天敵の餌になる事を前提に産卵する。その理由は弱い仔を混ぜながら孵化させ、孵化した中から強い仔だけが生き残れるように組み立てる。この事が自然の摂理と考えています。

親が卵や仔を守れる魚は卵数も少数です。金魚では孵化日数(積算温度)や産卵場所(水流の良い場所とか、水面に近い場所、水底の水流の無い場所)等では、孵化時間がマチマチなので充分な細胞分裂が出来ないので湾曲の仔が多い。
変形魚(湾曲した針子)の多少で発症率が決まったり、親魚によっては孵化水槽の水底に湾曲した孵化稚魚が異様に多い時も有ります。この様な親魚の卵は遺伝的な欠陥が有るのかも知れません。

受精卵が孵化した直後から泳ぎ出すまでの間に、孵化針子が水槽の縁にぶら下がる現象が見られますが、この期間が背骨や内臓の形成に重要な時間と思っています。頭に分泌の粘液(ノリの役目)でぶら下がるのですが、湾曲の孵化稚魚(針子)は、泳げないから、ぶら下がれないのです。水低でクルクル回る事しか出来ません。
この時点で既に奇形の現象が現れているので(正常に泳げないので)、動く餌(シュリンプ幼生)は捕れません。一週間位は生きて居ますが浮く事が出来ないのでやせ細り死に至ります。

穂竜も当歳魚で活発な、活動がおお盛な時期が過ぎ、水温の低下と共に酵素の分泌も低下して運動が緩慢になってくると転覆が現れる。マダイの稚魚が麻酔をかけられたのと同じなのです。冬の水温低下は転覆病症状が現れる時期になります。この症状には治療薬は有りません。治療薬の名も聞きません(効きません)。

 

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